林真理子のBeautiful Voice なるほど! 小田急

story.14 和へと向かう

先日、仲のいい友人の新築披露に出かけた。そこでの茶会も招かれたのである。

長年キャリアウーマンとして働いていた彼女は、

「老後はお茶室つくって、茶道教師をするのが夢なの」

と語っていた。まだまだ老後には間があるが、新しくつくったおうちでこれからお茶の教室を始めるのは本当らしい。

「あなたももう一度、ちゃんとお稽古を始めなさいよ」

と言うことで、秋から私も通うことにした。

この連載でも書いたことがあるが、ある程度トシをとった女が、

「私、知りません」

と澄ました顔でいられるのは、限界というものがある。お抹茶の飲み方ぐらい知っておかなければやはり恥ずかしいと私は思う。

そんなある日、美容サロンで雑誌をめくっていたら、人気ある女性誌の表紙にタレントさんの顔があり、

「○○、和を始めます」

とあったのだ。

彼女はいわゆるママタレの一人であるが、センスのよさでは定評があり、プロデュースするお店やお洋服もヒットしている。

「そうか… こうきたか」

といささか醒めた目で見つめる私。なぜなら芸能人がワンランク上をめざして、和のテイストにいくのは何度も見ていたからだ。

急に着物に懲り始めたり、お茶や日本舞踊を始めたりする様子には既視感がある。

しかしページをめくっていくうち彼女が本気なのがわかる。今住んでいる家を、本格的に和風に改築するという。そして和の食器を買い集めていくページが続く。そのうち、

「こういう若い人が、和に興味を持ってくれるのはいいことかもしれない」

と頷く私がいた。

なにしろこの国は、和の方へ行こうとすると本当にお金がかかる。自国の文化をとり入れようとすると、こんなにお金がかかる国が他にあるだろうか。

着物もそうだし、ちゃんとした割烹料理はフレンチやイタリアンの倍の料金がかかる。家だって日本家屋をちゃんとつくろうとしたら莫大なお金がいるはずだ。ましてや茶人となって、骨董品を集め始めるのは大金持ちの究極の道楽だ。

しかし時たま若い人が、こうした「和」に果敢に挑戦しようとする、それを冷ややかに見たりしてはいけないはずだ。

大人としては、別の方角からのアプローチが必要であろう。このあいだのお茶会でわかったことがある。お正客となった友人の会話が素晴らしかったのだ。お茶のことはよくわからないと言いながら、茶道具を尋ねながら、教養ある楽しい話題へと持っていく。和を楽しむのは洗練を楽しむこと。そう考えれば学ぶことはいくらでもある。